良くある質問
歯周病は必ずかかるわけではありません。歯周病の多くは、原因であるプラーク(歯垢)や歯石を日ごろの歯磨きや、定期的な歯科検診などを受けることにより、予防することができます。
Q02.歯周病の原因はプラーク(歯垢)と聞きましたが、プラーク(歯垢)って何でしょうか
プラーク(歯垢)とは、歯に付着している白色、または黄白色の粘着性の新着物で、非常に多くの細菌とその生産物から構成されています。また、プラーク(歯垢)は、バイオフィルムとも呼ばれていて、薬品だけでは除去しにくい状態になっています。そのためにしっかりと歯ブラシなどで除去することが必要です。
Q03.全身の病気と歯周病の関係について教えてください
歯肉は体の中でも、非常に敏感な組織です。また、お口の中は全身の中でも微生物、細菌などが最も多く存在している場所でもあります。そして、あらゆる全身疾患と歯周病の関連性が近年の研究により指摘され始めています。歯周病との関連を上げられているものには、呼吸器疾患、心疾患、糖尿病や妊娠などがありますが、中でも糖尿病との関連は深く、糖尿病は歯周病を悪化させる大きな原因の一つでもあるのです。
Q04.歯周病が他の病気を引き起こすことがあるのでしょうか
重症の歯周病になり、口の中に歯周病を引き起こしている細菌が多くなると、血液や呼吸器内に入り込み、心筋梗塞、動脈硬化症、肺炎、早産などを起こしやすくなります。
タバコが歯周病に悪い理由はいくつかあります。
1)タバコに含まれる科学物質が、血管を収縮させ、歯肉からの出血を抑え、歯肉を硬くすることで症状が気づきにくくなり、知らないうちに歯周病が進行してしまうこと
2)タバコに含まれるニコチンが全身的に免疫系を傷害し、免疫機能を低下させるので、歯周病を悪化させ、治り方が悪くなること
3)ニコチンは歯根のセメント質に結びつでやすいため、せっかく歯根面をきれいにしても、すぐにニコチンが付着して、治療の効果が上がりにくいこと
4)日本や欧米の調査で、喫煙開始年齢が若いほど、また、喫煙本数が多いほど歯周病の悪化が進んでいるとの研究結果が出ていること
つまり、タバコは歯周病にかかりやすくするばかりでなく、気づきにくくし、また、治りにくくする原因といえるのです。
あります。歯周病のかかりやすさは、大きく分けて口の中の状態と全身状態によります。前者はブラッシングの状態や歯並び、歯周病菌の種類などが影響しますし、後者は生活習慣(喫煙など)やそれに関する病気(糖尿病など)、遺伝的影響など、いろいろな要素が関わって歯周病にかかりやすくするのです。
また、遺伝子診断、免疫応答、炎症反応の検査により歯周病にかかりやすい患者さんがいると報告されています。特に通常は40歳前後に症状があらわれる歯周病が10歳代後半からあらわれる早期発症型と呼ばれる歯周病がこれにあたります。
歯周病そのものが遺伝するということはありません。しかしながら、非常に少ない例ですが、遺伝性要因があるとされる、歯肉の増殖する特殊な歯周病があります。また、近年、遺伝子診断により、本当に遺伝的になりやすい人、なりにくい人がいるかどうか科学的に解明されつつあります。
Q08.一生懸命歯ブラシをしても、歯周病にかかってしまうのでしょうか
歯周病を予防するには、歯の表面や歯と歯の間、歯と歯肉の間の境など、行き届いた歯磨きが必要です。本人は充分磨けていると思っていても、実際には磨けていないことがよくあります。そのために、歯科医師や歯科衛生士による各個人に合った歯ブラシと補助的な清掃用具(フロス・歯間ブラシなど)による歯磨き指導を受けることをお奨めします。
はい、口呼吸することにより、口の中が乾きやすくなり、プラーク(歯垢)がたまりやすくなります。また、唾液による自浄作用がなくなることから、口の中の細菌の活動性を高めるなど、悪影響があります。
歯ぎしりが直接、歯周病の原因となることはありません。しかしながら、強い力が加わることで、歯の根やその周囲の骨組織に負担をかけ、骨の特定部分のみを吸収させたりすることがあります。
Q11.歯ブラシのときに出血したり、しなかったりするのですが、どうしてですか
歯肉に炎症が起きていると、食物や歯ブラシ程度の刺激でも歯肉から出血しやすくなります。ただ、炎症の進行やその日の全身の健康状態などにより、必ず出血するとは限りません。歯磨きのとき、一度でも出血したことに気づいたならば、早めの受診をお奨めします。
Q12.歯ぐきがはれたような気がするのですが、しばらくすると治ります。でもその繰り返しでだんだん歯が動いてきているような気がするのですが、なぜでしょうか
歯ぐき(歯肉)が腫れたのは、炎症があるためです。その症状は多くの場合、慢性で、自覚症状がないまま進行します。ただ、全身的な免疫力が弱まったときなどに痛みや違和感といった自覚症状として現れやすくなります。歯周病の進行に伴って、歯を支えていた骨(歯槽骨)が徐々に吸収されますから、歯の動きも大きくなります。たとえ今腫れが治っていても、歯周病が治ったわけではありません。早めに受診しましょう。
Q13.体調が悪くなるたびに歯ぐきが腫れるのですが、なぜでしょうか
歯肉は体の中でも非常に敏感な部分です。歯肉に慢性の(緩やかに進行している)炎症があるところは、体調を崩したときに症状が出てくることがよくあります。 ですから、自覚症状がなくても、早めに検査を受けることをお奨めするのです。
Q14.歯ぐきの色が黒ずんでいて気になります。放っておいても大丈夫なのでしょうか
歯肉には、皮膚と同じでメラニン色素が沈着しています。個人差はありますが、黒いから不健康というわけではありません。このほかに、喫煙などで後天的に付く場合もありますが、喫煙による害は全身的にはもちろん歯周病にも大きな危険因子です。
Q15.口臭があると家族に指摘されたので、一生懸命歯ブラシをしていますが、あまり変わりません。どうしたらいいのでしょうか
自分では充分な歯磨きだと思っていても、実際には隅々まで行き届いていないことはよくあります。口臭は歯周病が進行した場合、歯周ポケットの中にいる歯周病原性細菌が原因であることが多くあります。深いポケットには歯ブラシが届きませんので、早めに受診して、ブラッシングの指導と歯石の除去などの歯周病治療をしてもらいましょう。
Q16.歯ぐきが下がって歯の根が出てきたのですが、どうしてでしょうか
歯肉や歯を支えている骨は、加齢に伴い少しずつ下がってくるのが自然です。しかし、誤った歯磨き習慣や歯周病により病的に下がる場合もあります。
Q17.歯ぐきが腫れたときに歯科医院に行くと、ポケットといわれる部分を洗って薬をくれます。それで腫れは治るのですが、数ヶ月経つとまた腫れてしまいます。どうしてでしょうか
歯周ポケットじゃ深くなると、歯ブラシが届きにくく、ポケットの中の細菌を自分で清掃することは困難です。そこで歯科医院ではポケットの中を洗うことと抗生物質などの飲み薬で症状は軽減させます。ところが、ポケットの中に歯石が歯の根の部分に付着したままで残っていると、歯周ポケットの中に細菌が繁殖することになり、炎症が進行するので、歯肉(歯ぐき)が再び腫れてくるのです。歯石の確実な除去が必要です。
Q18.入れ歯のバネがかかっている歯がぐらぐらしてきたので、歯科医院に行ったら歯の周りの骨がなくなったと言われました。これも歯周病のせいでしょうか
入れ歯のバネがかかっている歯は他の歯よりも負担が大きいので、長い間使用していると歯を支えている骨が吸収されることがあります。これ自体は歯周病ではありません。ところが、入れ歯のバネがかかっている歯はプラークが付きやすく、歯周病になることが多いので一層の注意が必要です。ぐらぐらしてきたと感じましたら、歯科医師に相談してみてください。
Q19.自分の歯を残してもらいたいので、歯科医院に行ったのですが、抜いた方が良いといわれました。歯周病の治療をしても自分の歯が残らないのでしょうか
歯周病の治療により、歯肉(歯ぐき)の炎症はほとんどなくなり、歯周病の進行はほぼ止まります。ところが、来院していただいた時点で、歯周病の進行を止めることができないほどに歯を支えている骨がなくなっていると、歯を抜かざるを得なくなります。そのために歯は抜くと診断されたのかもしれません。
Q20.重症の歯周病にかかっていると診断されました。早期に抜いたほうが良いといわれたのですが、何とか歯を残せないでしょうか
保存が無理になっている歯をいつまでも残しておくと、隣の歯を支えている骨が無くなってきて健康な歯を巻き込んでしまいます。また、骨が溶けすぎてしまうと入れ歯の支えとなる土手が低くなって満足のできる入れ歯を入れることが難しくなります。歯を残すことだけが最良の方法とは限りません。歯科医師とよく相談なさってください。
Q21.歯周病の治療で歯石を取ったら歯ぐきが下がってすき間があいてきました。それに食べかすがはさまったり、息が抜けてしゃべりにくくなったりしています。どうしてでしょうか。また、どうしたらよいでしょうか
歯石を取った後、歯肉が下がったのは、歯の間を塞いでいた歯石を除去したことと、歯石を除去したことで歯肉の腫れが引いたためです。歯周病が進行して骨が溶けてしまってから治療をするとどうしてもご質問のようなことが起きてしまいます。骨が溶ける前に治療すれば、このようなことにはなりませんので、早めの受診をお奨めします。このような症状が気になり、無くしたいのであれば、すき間のあいた歯にそれぞれセラミック(白色)や金属のかぶせ物を作ることで対処できます。しかし、この場合、歯を削る必要がありますので、歯科医師によく相談してください。
Q22.特に症状がなかったのですが、歯周病の治療ということで歯石を取った後で、歯がしみたり、歯が浮いた感じがして、噛みにくくなりました。治療を受けたのに、なぜ、症状が出てきてしまうのでしょうか。また、治るのでしょうか、心配です
歯周病の場合、歯と歯肉の間にできたポケットの中に歯石は付着しています。この歯石を取ると、歯の根の部分が露出します。この部分は歯の神経に近いので、冷たいものがしみやすくなります。この場合、しっかりと磨いていれば半年ほどでしみなくなりますが、しみるのは個人差もあり、症状が激しい場合は、歯の知覚が過敏になったことに対する治療が必要になります。歯石を除去した後に歯が浮いたと感じるのは、歯石を除去するときの刺激で一時的にはぐきと骨に炎症が起きるからです。これも、通常は1~2ヶ月で治りますが、歯周病の進行が著しい場合は抜歯になることもあります。
Q23.金属の歯(あるいはポーセレンの歯)を10年前に入れたのですが、最近、、黒く金属が見えてきて少しぐらぐらするので、歯科医院を受診すると歯周病にかかっていると言われました。どうして歯周病にかかってしまったのでしょうか。
人工のかぶせ物や詰め物をした歯であっても、お手入れが悪いと歯ぐきとの境目にプラーク(歯垢)が溜まり、歯周病が起こってきます。かぶせ物と歯との間に段差がある場合はなおさらです。治療を受けた歯は特に歯磨きに注意して、歯科医院でのメインテナンスが必要になります。
Q24.ブラッシングは食後すぐにしなければ、いけないのでしょうか。忙しいので毎食後すぐにブラッシングできないのですが
確かに食事の後は、お口の中の細菌の活動性が高まるので食後すぐに歯磨きするのが理想的です。しかし、不十分な歯磨きを一日三回するよりは、就寝前の一回だけでもしっかり時間をかけて丁寧に行き届いた歯磨きをしたほうが効果的です。
Q25.爪楊枝で食後に歯の間の汚れを取るのは、良いのでしょうか
爪楊枝で取れるのは、歯の間の食べ物の滓(かす)程度とお考え下さい。爪楊枝でプラーク(歯垢)をすべて除去することはできません。プラーク(歯垢)の除去は歯ブラシが原則だということは、多くの研究で証明されています。水流装置でも、取り除くことはできません。
炎症を引かせる薬剤成分などが入っているもののありますが、基本的には歯磨剤の成分はどれも同じようなものです。一番大事なのは、どの歯磨剤を使うかではなく、ブラッシングでプラーク(歯垢)を除去できるかどうかです。
Q27.歯周病の予防に歯磨剤は、どれくらい効果があるのでしょうか
歯周病の一番の予防法は、プラーク(歯垢)の除去そのものです。一部の歯磨剤には、殺菌作用を上げているものもありますが、あくまでもプラークをしっかりと歯ブラシなどで除去した後の補助的なものです。効果は、歯磨剤に含まれる虫歯予防(フッ素入り歯磨剤に限る)と、研磨剤により歯に着色することを防ぐことです。
うがい薬だけでプラークの除去はできません。殺菌作用のあるうがい薬はプラーク(歯垢)の再付着を防ぐことが少しできると言われていますが、ブラッシングをきちんと行ったうえでの補助的なものとお考え下さい。
Q29.塩による歯ぐきのマッサージは歯周病の予防に良いのですか
塩はずいぶん昔から歯磨剤として用いられてきました。確かに若干の殺菌作用や唾液分泌の効果があり、水分を吸収しますので、歯肉が引き締まった感じがするかもしれません。しかし、塩自体に歯肉の血液循環を良くしたり、じょうぶにするといった特殊な作用はありません。歯周病の予防、治療に必要なプラーク(歯垢)の除去はできません。
万人に適した歯ブラシというのはありません。歯磨きの方法と同様で、個々の患者さんの歯の並び方や大きさ、歯肉の状態などにより、どのような大きさ、硬さの歯ブラシが適しているかは変わってきます。歯科医師、歯科衛生士の指導を受けてください。
Q31.歯周病の予防に何か良いサプリメントみたいなものはありますか
現在、お口の中の衛生状態を高めるための製品は、歯磨剤をはじめ、洗口剤、電動歯ブラシや音波はブラシなど実に様々なものが紹介されています。しかし、お口の中のプラーク(歯垢)を除去できなければ意味はありません。何よりも重要なのは、行き届いた歯磨きによる歯垢の確実な除去です。
Q32.検診で歯周病と指摘されました。虫歯はないと言われています。痛みもないし、食事するのに不都合もないので、歯医者さんに行く必要はないのでしょうか
歯周病は痛みなどの自覚症状をほとんど伴いません。気がついたときには、手遅れで何本もの歯を抜かなければならないようなことになりかねません。たとえ虫歯がなくても、痛みがなく食事するのに不都合がなくても、もし歯周病だと言われたことがあるのでしたら、早めに受診されることをお奨めします。